抄録
レボブピバカインはブピバカインのS (-) 光学異性体で, 物理化学的性質はもう一方の光学異性体であるR (+) 体とほぼ等しい. 従来ブピバカインはこれらの光学異性体の等量から成るラセミ型が用いられてきたが, 最近になってより毒性の少ないS (-) 体がポプスカイン®として上市されるに至った. 局所麻酔薬の毒性には, 麻酔薬が直接神経に作用して生ずる, いわゆる神経毒性と, 誤って血管内に入った際や硬膜外麻酔や神経ブロック目的で多量に用いた場合に血中濃度が上昇することによって生ずる, 中枢神経毒性, 心毒性がある. 後2者についてはレボブピバカインがブピバカインに比べてこれらの毒性が低いとされるが, これは痙攣や低血圧・心停止などの中毒症状を生ずる量がブピバカインに比べて多いうえ, その際の血中濃度もブピバカインに比べて高いことによって示されている.