2011 年 31 巻 2 号 p. 193-201
麻酔科医は周術期の脊髄障害発生・増悪を防ぐ役割を担っている.脊椎手術では術中脊髄機能障害を防ぐために運動誘発電位(motor evoked potential:MEP)モニタリングやwake-up test(WT)が施行される.MEPは薬物によって抑制され,一方WTは意思疎通の難しい患者にとって困難である.MEPとWTの両立を図る工夫に関して,当院の脊椎手術時のアルゴリズムを示す.また,大血管手術においては,薬理学的脊髄保護に加えて,短時間の先行する非致死的な虚血に引き続いて起こる虚血に対して抵抗性(虚血耐性)を示すプレコンディショニングと呼ばれる現象を脊髄保護の領域でも臨床へと導入することが期待されている.ここでは麻酔科医が臨床上で脊髄保護に関与できる可能性について言及する.