ペインクリニックの診療に東洋医学を取り入れる傾向は近年ますます強くなっている.東洋医学的治療の中で漢方薬(湯液)と鍼灸治療は2本の大きな柱であり,これらを痛み治療に応用することは古くから行われている.漢方薬の中には病名や症状に対して簡便に処方できる方剤があるが,難治の症例では東洋医学的概念を理解した上で処方しなくてはならない場面も少なくない.一方,鍼灸治療の中にも一定の知識,技術を修得すれば比較的容易に行える治療法もあるが,それらのほとんどは対症療法(標治)であり,より効果的な治療や緩和ケアなど幅広い分野での応用を目指すならば東洋医学的診断(弁証)に基づく治療(論治)は必須である.