抄録
血友病A合併の61歳,男性.急性大動脈解離による緊急弓部大動脈人工血管置換術に対し,第VIII因子製剤(FVIII)を持続および間欠的投与で管理した症例を経験した.術前にFVIII3,000単位を単回投与することで,活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT),第VIII因子凝固活性(F8)を正常値に補正し,以降はAPTTとF8を指標にFVIIIを4単位/kg/hrで継続投与した.ヘパリン投与でAPTT,F8は著明に低下し,プロタミン投与でACTは改善するもAPTT,F8は改善を認めず,止血に難渋した.F8が測定不能となり,途中からAPTTのみを指標にFVIIIの間欠的投与および持続投与量を調整した.結果,APTTは改善し,止血に成功した.術後も再出血や血栓症の合併はなく良好な経過を得た.術中の第VIII因子補充の指標としてF8のみならずAPTTも可能と考えられた.