2013 年 33 巻 2 号 p. 232-236
68歳女性.甲状腺癌に対し甲状腺全摘出術が予定された.内径3.7mmと高度気道狭窄のため,PCPS確立後に麻酔導入を行うこととなった.脱血管は両側大腿静脈には挿入できず,右腋窩動脈,右鎖骨下静脈でPCPSを開始し,麻酔導入後気管支ファイバースコープを用いて内径5mmの気管チューブを挿管した.術中低血圧が持続し,大量輸血が必要であった.手術終了後,腹部の著明な膨隆を認め緊急開腹術を行ったところ両側総腸骨静脈の損傷が認められた.PCPSを用いての麻酔導入は気道管理という点において有利であるが,常に合併症を念頭に置き細心の注意を払うことが重要であると思われた.