2015 年 35 巻 3 号 p. 337-343
肺保護換気とは,急性呼吸窮迫症候群の患者に対する人工換気の際に,さらなる肺傷害を防ぎ予後を改善するために少ない一回換気量を用いて人工換気を行うという換気戦略である.その後,手術中の患者の換気条件においても同様の換気戦略が術後の予後に影響するかどうかを確かめる研究がなされ,いくつかの患者コホートにおいてその有用性が確かめられてきている.すべての手術患者に対してではないものの,リスクの高い患者群では術中にも肺保護換気を行うべきではないかと考えられてきている.本稿では,術中に肺傷害が起こる機序,肺保護換気の実際,そしてどのような患者に肺保護換気を行うべきであるかについて,解説する.