2016 年 36 巻 3 号 p. 329-333
過去1990年頃には麻酔に起因する医療事故が頻発し社会問題と化したが,これらの減少に向けた組織的な取り組みの一つとして,高機能患者シミュレータ(HPS)が導入された.HPSによる訓練では事故の背景にある人的エラーや潜在エラー要因,活性化イベント,防御メカニズムについて理解し,人の行動分析(動的判断モデル)に基づく対処が重要である.日本における麻酔科関連学会においてHPSシンポジウムやワークショップが多々開催され医療安全のための社会基盤としての認知が広まったが,2005年に日本医学シミュレーション学会が設立され,さらなる啓蒙活動の場が生まれた.これらの経過を紹介し,将来計画について議論する.