2016 年 36 巻 3 号 p. 389-392
全身麻酔後の合併症として最も多いものに,術後悪心・嘔吐(postoperative nausea and vomiting:PONV)があげられる.現在用いられている揮発性麻酔薬では,およそ20~30%の発症頻度といわれている.通常患者の生命予後に大きく影響するものではないとはいえ,発症した場合患者の術後不快感のみならず,誤嚥性肺炎や嘔吐刺激に伴う筋緊張による創部離開や出血の懸念がある.また持続した場合,脱水や電解質異常の原因ともなり,入院期間の延長を余儀なくされる可能性もある.術前からPONVのリスク患者の把握とその予防,万が一発症してしまった場合の対策をしっかりと立てておくことが重要である.