本稿では,高齢者に対するデスフルランの長所と短所に着目し,効果的な使用方法を検討した.高齢者を対象とした多くの研究結果から,デスフルランの最大の長所は覚醒が早いことであり,覚醒遅延が危惧される高齢者手術において,有用であると考えられた.また,認知症に対する影響が軽微である可能性や気道反射回復による誤嚥回避の可能性も長所として示唆された.一方,早期覚醒によって出現する心血管反応や術後疼痛が高まる点に関しては短所であると考えられた.高齢者においては,これらの長所と短所は諸刃の剣となり,重篤な状態に陥る可能性もあることから,確実な術後鎮痛を計画するなど,デスフルランの特徴を十分に理解した対応が必要である.