近年,日本の医療水準はほとんどの医療分野で米国と肩を並べるまで成長した.しかし麻酔の分野では,いまだ患者がリスクに晒されている領域がいくつか存在する.それらに共通している点は,非麻酔科医が麻酔業務を兼務した結果,不幸にして患者が偶発症に遭遇し,時に命を落としていることである.鎮静もその例にもれない.鎮静の対象となる手術や処置内容は,術者にとって安易に施行できるものが多い反面,実はむしろハイレベルの麻酔技術が要求される.そして,日本の鎮静現場でのガイドラインの遵守と鎮静・鎮痛薬投与の実態,麻酔科医以外が行う鎮静の許可をだれがどの基準で与えるのかなど,そこかしこに不透明さがある.本稿では,日本の現状と諸外国のガイドラインを照らし合わせ問題の根源に光を当て,麻酔科のチームが鎮静施術者の力となり,いかに患者の安全に貢献できるかを探求してみたい.