2019 年 39 巻 2 号 p. 125-130
71歳女性の左肺上葉の肺膿瘍に対して開胸左肺上葉切除術を行った.術前の胸部CTで肺膿瘍によって気管が左に偏位し,右主気管支が椎体によって圧迫されている所見を認めていた.手術終了後,仰臥位で両肺換気を開始したところ換気量が著しく低下した.気管支鏡検査で右主気管支狭窄の増悪を認め,術前から存在していた右主気管支の狭窄症状が左肺上葉切除・仰臥位によって顕在化したと判断した.半座位に体位変換したところ,換気状態が改善した.術前の胸部単純CR画像や胸部CTで気管・気管支の偏位が存在する症例では,呼吸困難症状や気道狭窄音の有無を確認し,全身麻酔下で気道狭窄が顕在化する可能性を考慮した麻酔計画が必要である.