33歳,女性.完全大血管転位症に対し生後15カ月時にSenning手術(心房内血流転換術)が行われた.心不全は徐々に進行していたが,インフルエンザ感染を契機に急性増悪した.多臓器不全を呈したため,当院へ緊急搬送され補助人工心臓装着術を行う方針となった.凝固異常による大量出血や右心不全などの高度な合併症が予想された.Senning手術後の解剖学的特徴により肺動脈カテーテル挿入は困難と判断し,術中は経食道心エコーを用いて循環動態を観察しながら麻酔管理を行った.成人先天性心疾患患者は増え続けることが予想され,麻酔科医は各疾患の病態の特徴を理解しておく必要がある.