2020 年 40 巻 1 号 p. 44-49
2000年代初頭までに報告されたメタ解析などの各種報告では,硬膜外麻酔や脊髄くも膜下麻酔は周術期合併症や死亡率を減少させ,予後改善に寄与しうるとされてきた.しかしその後の報告では,硬膜外麻酔により周術期合併症や死亡率は減少しないという結論の報告も増加してきた.周術期全身管理法の進歩や内視鏡下手術の普及などにより硬膜外麻酔の利点が減少してきたことが理由として考えられる.しかし,区域麻酔の有用性が完全に否定されたわけではなく,近年ではビッグデータを二次利用することで麻酔法が患者の予後に及ぼす影響についての解析が行われている.本稿では,区域麻酔がハイリスク患者の術後経過に与える影響について,病態や術式ごとに分類し文献的に考察する.