2020 年 40 巻 7 号 p. 622-629
交感神経ベータ受容体遮断薬(β遮断薬)は心不全や頻脈,狭心症,心筋梗塞後の患者には積極的適応のある主要降圧薬である.すなわちβ遮断薬は心保護を目的とした降圧薬であり,その心拍数抑制効果が生命予後を改善するという仮説検証がいくつか計画されてきた薬でもある.非心臓手術患者に対するβ遮断薬の周術期使用は一時期強く推奨されたが,その後周術期β遮断薬は慎重を期して使用するように学術的根拠に基づく推奨が後退している.その変化が如何にして起こったかを正しく知ることが周術期にβ遮断薬を使いこなす上で重要だと考える.本稿ではβ遮断薬の作用機序ならびに同薬の周術期介入効果に関する学術的根拠を概説する.