2023 年 43 巻 2 号 p. 128-136
古くから乳酸値は死亡率や予後予測の指標の一つとして使用されており,現在でも敗血症や心臓手術後などを中心に周術期や集中治療管理で血中乳酸値を治療の指標とする場合がある.しかし血中乳酸値が上昇した場合,組織低酸素や嫌気性代謝の亢進によるものだけでなく,手術手技や薬剤などの影響も考慮する必要がある.最近では産生された乳酸をエネルギー源として骨格筋や心臓,脳などで利用している乳酸シャトルという考え方があり,特に運動生理学的な乳酸値の評価は大きく変わりつつある.血中乳酸値自体を低下させる努力より,血中乳酸値の上昇を引き起こしている原因を突き止めて対処することが重要である.