2023 年 43 巻 2 号 p. 177-183
スタイレットは気管挿管時の操作性を向上させる有用な補助器具であるが,その剛性により気道合併症を増加させる懸念がある.本研究では数理モデルとマネキンを用いた検証により,スタイレットの潜在的リスクと安全な使用方法について考察した.まず,仮にスタイレットを直線的に抜去した場合,気管チューブ先端が大きく変位することを示した.また数理モデルにより,スタイレットの形状や屈曲角度に応じた理想的な抜去法を示した.さらにマネキンを用いた実験により,強角度のスタイレット使用は喉頭損傷のリスクを高める可能性を示した.スタイレットを使用する際は,その有用性とともに潜在的リスクやメカニズムを認識することが重要である.