2023 年 43 巻 3 号 p. 215-219
膿胸に合併した被包化胸水の治療で手術を回避したい場合に胸腔内線維素溶解療法を実施することがある.今回,同療法後の胸腔内洗浄中に脳空気塞栓症を発症した症例を経験した.症例は49歳男性で膿胸加療中に被包化胸水を認めたためウロキナーゼ胸腔内投与を6日間実施した.2日後に実施した胸腔内洗浄中に意識消失・左麻痺を発症,脳空気塞栓症と診断した.高圧酸素療法実施困難のためエダラボンを投与したが意識障害が残存した.胸腔内線維素溶解療法や胸腔内洗浄には,まれだが重篤な合併症として脳空気塞栓症があることに留意する必要がある.