抄録
腎動脈下腹部大動脈置換術周術期の腎機能・内分泌反応・循環動態の変動と麻酔法との関係を検討した.麻酔法によりNLA群(13例),MDF群(フェンタニール30μg/kg, 15例),GOF群(12例),BTP群(ブトルファノール75μg/kg, 14例)に分け術後2日目まで上記諸因子を測定した.腎機能はBTP群を除き術前値以上で経過し,特にGOF群で良好に保たれた.BTP群では大動脈遮断中にGFRが軽度低下,術後1日まで続いた.BTP群では術中の心房圧の上昇が,またGOF群では血圧低下がそれぞれ軽度であった.血漿NE・E, ADHはBTP群>GOF群>NLA群>MDF群,RA系の活性はGOF群で最大であった.以上から循環血液量・血圧・麻酔深度の適正な維持が腎機能の温存に必要であると結論される.