高齢者において喫煙の周術期の呼吸機能,PaO2, PaCO2に及ぼす影響を分析した.対象は75歳以上の上腹部予定開腹術を受ける男女27名で,これを喫煙群13名(79±3歳)と非喫煙群14名(79±3歳)とに分けた.術前にスパイロメトリー,flow volume諸量を,また術前,術後1, 3, 7日目には空気呼吸下でのPaO2, PaCO2を測定した.術前呼吸機能検査では%肺活量が喫煙群で有意に低下していた以外には他のいずれの項目でも両群間に差は認められなかった.PaO2は両群とも術後1日目に有意に低下した.非喫煙群のPaO2は術後3日目には,ほぼ術前値まで回復したが,喫煙群は低下したままで両群間に有意差を認めた.PaCO2は術後1日目に喫煙群でやや高値であった他は有意差は認められなかった.以上結論として高齢喫煙者では術前呼吸機能検査やPaO2の低下はなくても術後PaO2の低下は有意にかつ長く続くと考えられる.