抄録
マスクによる前身麻酔下に大腿骨骨嚢胞ステロイド注入術中に起こった静脈空気塞栓症を報告する.麻酔医には知らされないまま透視下に嚢胞確認のため,約50ccの大量の空気が注入された.空気の注入後すぐに頻回の咳と徐脈が起こった.吸入ガスを純酸素に切り替え,硫酸アトロピンを投与することにより徐脈は改善した。パルスオキシメーターによる経皮的酸素飽和度の低下も軽度で短時間であった.以後麻酔と術後経過に特別な変化もなく,神経学的ならびに肺合併症も生じなかった.重篤な合併症は生じなかったものの,骨髄への空気注入の危険性を本報告により再び喚起するものである.