日本臨床麻酔学会誌
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胸部硬膜外麻酔の自律神経系へ及ぼす影響
荒川 真之永井 一成加藤 清司後藤 文夫
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1994 年 14 巻 2 号 p. 122-129

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抄録
高位胸部硬膜外麻酔が自律神経系に及ぼす影響について,心拍変動と収縮期血圧変動を高速フーリエ解析(FFT)を用いて解析した。心拍変動のパワースペクトラムのLow Frequency ComponentRR (LFCRR)とHigh Frequency ComponentRR (HFCRR)の二つの成分を検討すると,硬膜外麻酔により交感神経の指標となるLFCRR/HFCRRが有意に低下し,副交感神経の活動性を表わすHFCRRが有意に上昇した。また,収縮期血圧変動のパワースペクトラムのLow Frequency Componentsys (LFCsys)とHigh Frequency Componentsys (HFCsys)の二つの成分を検討すると,硬膜外麻酔によりLFCsysが有意に低下した。これは血管運動性交感神経活動の低下を意味する。母指温,第1趾温を麻酔前後で比較すると母指温が麻酔後有意に上昇した。これは胸部交感神経活動の低下を意味する。心拍変動,収縮期血圧変動の双方を同時解析する方法により,高位胸部硬膜外麻酔が副交感神経の活動性を亢進させ,交感神経の活動性を抑制することを改めて証明した。
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