手術侵襲時において脾臓がサイトカインを産生するか否かを究明するために,胃亜全摘術患者8例を対象として麻酔導入前の末梢動脈血をコントロールとし,手術開始1時間,および2時間後に脾静脈および末梢動脈血を同時に採血し,炎症性サイトカインであるインターロイキン1(以下IL-1),インターロイキン6(以下IL-6)および液性調節因子であるエンドセリン(以下ET-1),亜硝酸塩(以下NO)の濃度を測定した.
IL-1はいずれも測定濃度以下であった.末梢動脈血においてコントロールと比較して,IL-6は執刀2時間後より有意な増加を認め,ET-1も執刀2時間後より有意な増加を認めた.NOは有意な変動は認めなかった.脾静脈血では,IL-6が,執刀2時間に末梢動脈血に比較して有意に上昇を認めた.NOおよびET-1は有意差は認めなかった.
手術侵襲時において脾臓が,IL-6の産生臓器である可能性が示唆された.