要旨 術前検査において,プロトロンビン(PT)活性低下を示す患者の麻酔管理を2例経験した.活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)は正常値を示し,ヘパプラスチンテスト(HPT)は低下していたため,ビタミンK依存性凝固因子であるVII因子の低下が明らかになり,ビタミンK欠乏を疑った.ビタミンK1 10mg投与によるPT活性及びHPTの正常化,さらにPIVKA (protein induced by vitamin K absence or antagonist)-IIの高値を確認し,これら2症例はビタミンK欠乏であると結論した.原因は,術前の絶飲絶食とセフェム系抗生物質の投与が考えられた.出血傾向を呈する症例には,その病態を理解した周術期管理を行なうことが肝要である.