1999 年 19 巻 10 号 p. 622-625
脊椎へのがん転移による脊髄損傷が原因で生じた幻肢痛に対し,ケタミン持続投与で疼痛を長期にわたりコントロールできた症例を経験した.本例は,当初モルヒネ徐放剤でがん性疼痛管理を行なっていたが,脊髄損傷後に発現した幻肢痛はモルヒネ抵抗性であり,ケタミン持続皮下注を併用しすみやかな除痛を得ることができた.ケタミン投与開始約1ヵ月後に留置針刺入部の発赤,疼痛が顕著となったため,ケタミンの投与を経静脈的に変更し,死亡時まで痛みを自制内にコントロールすることができた.この結果より,がんの脊椎転移による難治性の幻肢痛の治療においてケタミン療法は試みる価値があると考える.