1999 年 19 巻 10 号 p. 626-629
要旨 うっ血性心不全を呈する心アミロイドーシス患者の上腹部緊急手術の麻酔を経験した.症例は62歳の男性で,主訴は上腹部痛であった.全身に著明な浮腫があり,心エコーではアミロイドの沈着による心筋輝度の上昇が認められ,拡張不全型の心不全と診断された.フロセミド投与,デスラノシドの急速飽和の後,入眠量のチオペンタールとケタミンで導入し,酸素-亜酸化窒素-ケタミン-フェンタニルで麻酔を維持した.手術室で抜管し,術後はフロセミド及びデスラノシドを中心とした循環管理で心不全は改善したが,約2ヵ月後,突然の心停止により死亡した.心アミロイドーシスを合併する症例では,慎重な循環管理が必要である.