1999 年 19 巻 10 号 p. 630-633
肥大型心筋症を合併した生後5ヵ月のNoonan症候群患者に対する開心術の麻酔を経験した.本症例では,心機能を悪化させている肥大心筋は心内修復後も存在するため,手術により必ずしも心機能が改善することは期待できなかった.しかも循環動態の変化により,左室流出路の閉塞症状と左室心筋の拡張障害が混在し,相反する治療目標が要求される病態をきたした.今回,術中経過は良好であったが,心室の拡張障害によると考えられる心不全が術後において遷延した.経食道心エコー図または両心房圧の測定による心臓への前負荷の詳細な評価に加え,Ca拮抗薬等の適切な使用が周術期管理において重要と考えられた.