抄録
テトラカインによる脊椎麻酔時の皮膚表面温の変化を赤外線式体温計(ジニアスTM)で経時的に測定し,冷覚検査法ならびにピン刺激痛覚検査法による麻酔域と比較検討した.赤外線式体温計による麻酔域の判定は皮膚5cm以内に0.4°以上の変化を示した部位とした.脊椎麻酔施行5分後,10分後では赤外線式体温計による麻酔域と冷覚ならびにピン刺激痛覚検査法による麻酔域との間に相関関係は認めなかったが,15分後と25分後,特に25分後で有意な相関と一致を認めた(それぞれr=0.85,r=0.81).赤外線式体温計による皮膚表面温の変化測定は,脊椎麻酔の麻酔域上限を推定するうえで有用であり,特に高齢や意識障害により意思の疎通の難しい患者にその使用が勧められる.