2002 年 22 巻 5 号 p. 198-201
先天性プロテインS欠乏症は,常染色体優性遺伝疾患で,ここ数年血栓性疾患として注目されている.プロテインS欠乏症は妊娠中や抗凝固療法中は診断が困難であるため,産褥後に抗凝固療法を中断して確定診断しなければならない.今回,妊娠中に出血傾向が出現し,凝固機能検査で先天性プロテインS欠乏症が疑われた双胎妊娠患者の帝王切開術の麻酔を経験した.妊娠中より産褥期まで抗凝固療法と物理療法を継続し,帝王切開術の麻酔は脊髄クモ膜下麻酔,早期離床のため術後硬膜外鎮痛法を施行した.周術期にわたって血栓症は発症しなかった.抗凝固療法終了後に先天性プロテインS欠乏症が診断できた.