日本臨床麻酔学会誌
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胸部大動脈遮断により救命し得た腹腔内大量出血症例の麻酔
小林 澄子笠間 晁彦弘田 博子茅 稽二
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1986 年 6 巻 1 号 p. 77-80

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抄録

切除不能膵癌に対する術中照射術後, 腹腔内大量出血をきたしショック状態に陥った症例の麻酔を経験した. 小範囲の開腹(2-3cm)にもかかわらず腹腔内より大量の動脈性出血が認められ, 血圧も急激に下降したことから即時閉腹し手術を中止した. しかし循環動態の安定化傾向が認められたので救命可能と考え, 胸部大動脈遮断 (10分間) を敢行し無事に手術を終了した. 腹腔内大量出血に対し胸部大動脈を遮断する方法は種々の合併症を招くことから必ずしも安全な方法ではないが, 本症例のように腹腔内の状況を把握しかねる場合は適応があると考える.

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