定例手術患者46人を対象として手術中の近位尿細管の障害を評価するために尿中酵素排泄量を検討した. 尿中酵素として近位尿細管刷子縁膜に局在するγ-GTPとライソゾーム内に存在するNAGを測定した結果, 術中の1時間排泄量は両酵素ともに健康成人の排泄量と大差なく明らかな近位尿細管の障害は存在しないと考えられた. しかし, 術中収縮期血圧が70mmHg以下に低下した5例ではγ-GTPとNAGの尿中排泄量は高値を示し近位尿細管障害が疑われた. また低血圧麻酔症例では尿中排泄量はコントロール群よりも低値であり近位尿細管は障害されていなかった. NAGはγ-GTPと異なり, より特異的に近位尿細管障害を反映する指標であると思われた. 手術中における尿中酵素の測定は急性腎不全の早期発見において有用である.