日本臨床細胞学会雑誌
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原著
乳腺穿刺吸引細胞診15470例の再検討
―新報告様式導入による変化―
秋保 信彦遠藤 希之井沢 路世熊谷 勝政長嶋 真紀武山 淳二八重樫 弘渡辺 みか森谷 卓也
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2007 年 46 巻 6 号 p. 323-331

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抄録

目的 : 乳腺における 「細胞診および針生検の報告様式 (日本乳癌学会)」 に従った細胞診成績を導入前と比較し, 導入の意義を検討した.
方法 : 15470検体を新報告様式導入前後で2期に区分し, (1) 診断区分ごとの比率, (2) 新報告様式の数値目標, (3) 英国乳腺スクリーニング基準 (QA) による感度・特異度などの係数, を比較検討し, (4) 癌例において, 細胞診で初回に悪性判定できなかった症例の診断確定までの追跡を行った.
成績 : (1) 新報告様式導入により悪性疑い症例の比率が増加し, 検体不適正率・鑑別困難率が低下した. (2) 新報告様式の目標値では悪性疑い症例中のがん症例の割合と, (3) QAの基準値では偽陰性率 (Fls-) が, 導入前後を通じ目標に到達しなかった. (4) 診断確定のための追加検査のうち, 再度の細胞診で悪性判定されたのは18.5%だった.
結論 : 数値変化の原因として, 新報告様式の導入効果 (組織型推定と根拠となる細胞所見の記載・臨床への判定理由フィードバック) が考えられた. 新報告様式の数値目標は精度管理上有益で, QAや文献データとの比較が可能となった.

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© 2007 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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