2009 年 48 巻 6 号 p. 386-389
背景 : 腟原発悪性黒色腫は, まれな腫瘍である. メラニン産生に乏しく, 多形性が強い症例では, 肉腫や肉腫様変化を伴う悪性腫瘍との鑑別が問題となる. 今回われわれは, その診断に苦慮した腟前庭部悪性黒色腫の 1 例を経験したので, 報告する.
症例 : 42 歳, 女性. 不正性器出血にて近医を受診し, 腟前庭部に隆起性病変を認めた. 生検組織診・細胞診では肉腫を含む多形性の目立つ悪性腫瘍が疑われた. その後, 腫瘍切除術が施行された. 1.2 cm 大の褐色調の隆起性病変であり, 組織学的には大小不同や多形性を有する紡錘形細胞のびまん性増殖が認められたが, HE 染色では明らかな色素沈着は認められなかった. Fontana-Masson 染色にて少量のメラニンが確認された. 免疫組織学的に腫瘍細胞は, S-100 蛋白および HMB45 に陽性を示し, 悪性黒色腫と診断された. 捺印細胞診では, 大型で多形性を有する類円形ないし紡錘形の核をもつ異型細胞の小集団がみられた. 少量のメラニン色素が確認できた.
結論 : 腟前庭部悪性黒色腫の捺印細胞診像を報告した. 多形性の強い腫瘍では, 悪性黒色腫が鑑別にあがり, その診断には免疫染色を含む特殊染色が重要である.