日本臨床細胞学会雑誌
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症例
子宮体部原発小細胞癌の 1 例
涌井 架奈子松井 成明安田 政実梶原 博伊藤 仁村上 優佐藤 慎吉長村 義之
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2009 年 48 巻 6 号 p. 404-408

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抄録

背景 : 子宮体部原発小細胞癌の 1 例を経験したので報告する.
症例 : 62 歳, 女性. 近医にて悪性腫瘍を疑われ精査加療目的に当院に入院. MRI では大きさ約 4 cm の骨盤内腫瘤を指摘された. 生検組織診では採取材料に乏しく判定は困難であったが, 子宮内膜細胞診で ClassIV, 小細胞癌が疑われ摘出術が施行された. 子宮内膜細胞診では背景に小型類円形細胞が索状, 木目込み細工様配列を呈して出現していた. N/C 比は高く裸核様, クロマチンは細顆粒状に増量していた. 本症例の興味深い所見として, 原発巣と腹腔細胞診に出現する腫瘍細胞に相違があり, 前者は小細胞癌, 後者は腺癌細胞が主体として出現していた. 組織学的に原発巣をみると腫瘍の大部分は小細胞癌が占拠していたが, 卵管口近傍の一部に類内膜腺癌がわずかに存在していた. 腹腔細胞診における所見の相違は, 腫瘍の占拠部位を原因として腺癌細胞が経卵管的に腹腔内に出現したことが推測された.
結論 : 子宮体部原発小細胞癌においては, われわれの経験した症例のごとく, 原発巣と腹腔細胞診で組織型が乖離することがある. 本腫瘍の組織学的性格を認識し, 子宮内膜細胞診および腹腔内に出現する腫瘍細胞には留意が必要と考えられた.

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© 2009 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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