抄録
背景 : 卵巣原発移行上皮癌は, 悪性卵巣腫瘍の 0.4%とまれである. 今回経験した 1 例を捺印細胞診および腹水細胞診の所見を含めて報告する.
症例 : 58 歳の 1 経産婦. 下腹部腫瘤を主訴に来院し, 画像診断にて悪性卵巣腫瘍が疑われ, 開腹術を施行した. 腫瘍捺印細胞診では, 壊死物質を伴う腫瘍性背景に, 比較的小型な腫瘍細胞がシート状あるいは重積性に出現していた. 淡明な細胞質を有し, 核は円形∼類円形, 大小不同が著明で, クロマチンは粗顆粒状に増量し, 小型核小体を認めた. 腹水細胞診では, 捺印細胞診と同様の腫瘍細胞が比較的平面的な細胞集塊を形成していた. 組織所見では異型の強い腫瘍細胞の波打つシート状増殖と線維性間質への浸潤性の発育を認め, 高度の壊死を伴っていた. 核の大小不同が著しく細胞分裂像を多数認めた. 腺腔形成, 粘液産生や扁平上皮への分化は不明瞭で, 良性∼境界悪性ブレンナー腫瘍の成分を認めなかったことより移行上皮癌と診断された.
結論 : 移行上皮癌の捺印細胞診や腹水細胞診では, 比較的豊富な細胞質を有する異型の強い腫瘍細胞がシート状あるいは重積性に出現したが, 細胞診での組織型の推定は困難と思われ, 今後の症例の集積が必要である.