抄録
背景 : カルチノイド腫瘍は, 消化管や呼吸器などに発生することが多く, 肝原発カルチノイド腫瘍はきわめてまれである. 今回, われわれは肝原発カルチノイド腫瘍の術中細胞診を経験したので報告する.
症例 : 40 歳代, 男性. 大型の嚢胞を伴う肝腫瘍に対し切除術が行われた. 手術中に行われた嚢胞内容に対する吸引細胞診では, N/C 比が比較的大の, 核偏在傾向を示す小型円形細胞が腺腔様とも, ロゼット様ともとれる配列を示していた. 組織では, 同様の細胞が, 索状あるいは充実性に一部ロゼットを形成して増生し, 腫瘍細胞は PAS (−), CD56 (+), NSE (+), クロモグラニン A (+), S-100 (+), シナプトフィジン (+), ガストリン (+) であり, カルチノイド腫瘍と診断した. また, その後の全身検索で他にカルチノイド腫瘍は存在せず, 術後 20 ヵ月を経た現在でもカルチノイド腫瘍は見い出されておらず, 肝原発カルチノイド腫瘍と診断した.
結論 : 肝原発カルチノイド腫瘍はまれであるが,嚢胞形成を伴う肝腫瘍の場合には, その可能性を念頭に置いて診断する必要があると考えられた.