日本臨床細胞学会雑誌
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特集 <検体採取・塗抹法の精度管理 (検体採取・塗抹法の工夫と効果)>
胆汁処理法の標準化のための工夫
古旗 淳広岡 保明
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2010 年 49 巻 6 号 p. 443-448

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抄録

胆汁処理法の標準化のために, 胆嚢結石症切除例の胆嚢壁を擦過して得た新鮮剥離細胞を用いて以下の検討を行った ; 1) 胆汁に曝された直後からの経時的形態変化の観察 ; 2) 各種保存液による形態保持の効果 ; 3) 各種保存液による集細胞率向上効果. さらにこれらの保存液の臨床材料への応用の有用性も検討した.
無添加胆汁による擦過細胞の経時的変化は, (1)直後から強い核の縮小・濃染→(2)4 時間後に高度→(3)染色性低下, 細胞膨化→(4)24 時間後に核内構造不明瞭化→(5)48 時間後に細胞消滅, の過程を示した. 保存液のうち CytoRich®液や YM®液で 24 時間後も核内構造を微細に保持できた. 集細胞数は無添加胆汁に比しウシ血清アルブミン, RPMI 1640 培地, 50%エタノール, CytoRich, YM およびポストサンプラー®の各液で有意に高値を示した. 臨床材料に YM 液を応用した場合, 48 時間後も核内構造の明瞭な細胞が多数みられ, 判定が容易になった.
形態保持と集細胞効果の高い保存液の使用は, 診断しやすい胆汁標本の作製に有用であった.

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© 2010 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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