日本臨床細胞学会雑誌
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症例
細胞診および術中迅速凍結切片で診断に難渋した組織球様の所見を伴う浸潤性小葉癌の 1 例
野坂 加苗庄盛 浩平宇田川 学井藤 久雄
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2011 年 50 巻 4 号 p. 231-234

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抄録

背景 : 浸潤性小葉癌はときに泡沫状あるいは細顆粒状の豊富な細胞質と異型の弱い核を特徴とする組織球様の所見を伴うことがあり, 細胞診において良悪性の鑑別がしばしば困難である.
症例 : 80 歳代の女性. 両側乳房に 1 cm 強の腫瘤を指摘され, 両腫瘤の部分切除が施行された. 捺印細胞診および迅速凍結切片にて左乳腺腫瘤は浸潤性乳癌と診断した. 右乳腺腫瘤の捺印細胞診では, 少数のリンパ球を背景に, 微細泡沫状∼顆粒状の豊かな細胞質をもつ細胞が散在性に出現していた. 核は軽度腫大し, クロマチンは微細顆粒状で核縁の肥厚や不整はなく, 小型の核小体を 1 個伴っていた. 迅速診断では, 軽度腫大核を示す大型の細胞が索状, 単細胞性∼集塊状に間質浸潤しており, 泡沫細胞あるいは顆粒細胞腫と類似していた. 細胞は CK AE1/3, CK7 に陽性で, CK20, S-100, CD68, E-カドヘリンに陰性であり, 最終的に浸潤性小葉癌と診断した.
結論 : 乳腺腫瘤の細胞診で炎症の乏しい背景に泡沫状の中∼大型細胞をみるときは浸潤性小葉癌の可能性も念頭におくべきである.

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© 2011 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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