日本臨床細胞学会雑誌
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症例
液状細胞診にて診断した気管支腺原発の粘表皮癌の 1 例
福満 千容河原 明彦山口 知彦安倍 秀幸多比良 朋希高瀬 頼妃呼秋葉 純鹿毛 政義
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2013 年 52 巻 5 号 p. 473-477

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抄録

背景 : 気管支発生の粘表皮癌は全肺癌の 0.1%とまれな悪性腫瘍である. 今回われわれは, 液状細胞診を用いた気管支擦過細胞診にて診断しえた粘表皮癌の 1 例を経験したので報告する.
症例 : 20 歳代, 男性. 検診の胸部 X 線で右肺門部陰影を指摘され, 気管支拡張症と診断された. その後, 胸部 CT で結節性病変を指摘され, 気管支擦過細胞診が施行された. 腫瘍細胞は, N/C 比が高く, シート状や腺腔様配列を示す立体的な集塊でみられた. 一部に細胞質の豊富な扁平上皮様細胞や粘液産生細胞が混在し, 免疫細胞化学において扁平上皮様細胞は p63 陽性, 粘液産生細胞は human gastric mucin 陽性を示したため, 粘表皮癌と診断した. 切除の組織標本では, 腫瘍は線維性間質を伴いながら充実性に増殖し, 部分的に大小の嚢胞形成を認めた. 腫瘍細胞は扁平上皮様細胞, 粘液産生細胞および中間細胞が混在し, Ki-67 labeling index が 1%以下であり, 神経浸潤, 壊死および核分裂像は認められなかった. WHO 分類の基準により低悪性度粘表皮癌と診断した.
結論 : 液状細胞診は直接塗抹法と比較して組織構築を反映した立体的な集塊で出現するため, 液状検体を用いた細胞診断ではこの所見に留意し組織推定を行うべきである.

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© 2013 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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