日本臨床細胞学会雑誌
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症例
空胞状の細胞質を多数認めた膵 solid-pseudopapillary neoplasm の 1 例
高橋 里実高橋 利幸田山 英司十河 沙佑里藤澤 孝志
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2017 年 56 巻 5 号 p. 237-243

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抄録

背景 : 充実性偽乳頭状腫瘍 (solid-pseudopapillary neoplasm, 以下 SPN) は分化方向不明な低悪性度の腫瘍で, 若年の女性に好発する. 今回われわれは超音波内視鏡下穿刺吸引法 (以下 EUS-FNA) にて, SPN のまれな亜型である clear cell variant を経験する機会を得たので報告する.

症例 : 患者は 44 歳, 女性, 前医で行った検診 CT で膵体部腫瘍を指摘された. 当院紹介となり, 各種画像診断で SPN が疑われ, 確定診断のため EUS-FNA が施行された. 細胞所見は比較的小型で, N/C 比は高くなく, 淡明で広い空胞状の細胞質をもつ腫瘍細胞が多く認められた. 一部ロゼット様配列もみられたため, 膵内分泌腫瘍 (pancreatic neuroendocrine tumor, 以下 PNET) との鑑別が問題となったが, 臨床画像所見と総合的に判断し, セル・ブロックを用いた免疫組織化学的検討を加えることで SPN として矛盾しないと判定した. 摘出標本の病理学的検査で SPN, clear cell variant と診断が確定された.

結論 : PNET との鑑別に苦慮したが, 細胞形態の観察, 臨床所見を考慮すること, clear cell variant の存在を認識することで, SPN の推測が可能であった. SPN clear cell variant の確定診断には免疫組織化学的検討が必要であることも強調したい.

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