日本臨床細胞学会雑誌
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症例
ラブドイド細胞の出現を伴った甲状腺未分化癌の 1 例
山代 翔大園部 宏門田 有紗海原 恭子羽原 利幸和久 利彦
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2018 年 57 巻 4 号 p. 223-229

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抄録

背景 : ラブドイド細胞の出現を伴う甲状腺未分化癌はきわめてまれである. 今回, 最近経験した 1 例の穿刺吸引細胞診所見, 転写法による免疫細胞化学的所見, 腫瘍の組織学的および電顕所見について報告する.

症例 : 患者は 80 歳代の男性で, 左肘部皮下腫瘤の生検で転移性癌が疑われた. CT で甲状腺右葉から尾側に膨隆する腫瘤を認めた. 甲状腺穿刺吸引細胞診で, 結合性が弱く, 高度の核異型を示す多彩な腫瘍細胞が多数出現し, 核偏在性で細胞質内に “硝子様封入体” を有するラブドイド細胞もみられた. 細胞診標本を用い, 転写後に免疫染色を施行した. 腫瘍細胞は cytokeratin と vimentin に陽性であり, 特に “硝子様封入体” は強陽性を示した. 全摘された甲状腺腫瘍では, 大部分で多形性を示す未分化癌成分がラブドイド細胞を伴って増殖し, 一部に典型的な乳頭癌成分を認めた. 電子顕微鏡的には, 核偏在性で細胞質が豊富な腫瘍細胞は, 多量の中間系フィラメントが凝集を示し, ラブドイド細胞であることが裏づけられた.

結論 : ラブドイド細胞の出現を伴う本例の甲状腺未分化癌の診断に際し, 細胞転写と細胞免疫化学染色は有用であった.

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© 2018 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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