日本臨床細胞学会雑誌
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症例
悪性胸水で発症し, 細胞診で原発巣の推定に苦慮した甲状腺乳頭癌の1例
伊藤 しげみ植木 美幸村田 孝次竹内 美華大山 友紀内城 孝之安達 友津佐藤 郁郎
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2019 年 58 巻 1 号 p. 22-28

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抄録

背景 : 甲状腺乳頭癌による悪性胸水はまれで, 細胞学的特徴は十分に知られていない. われわれは, 悪性胸水で発症し鑑別診断に苦慮した甲状腺乳頭癌の1例を経験したので, 文献的考察を加え報告する.

症例 : 80歳代, 男性. 呼吸苦を主訴に受診し, 胸部CTで両側胸水と多発性肺腫瘍を指摘された. 胸水細胞診では, 核形不整, クロマチン増量, 細胞質内空胞を示す乳頭状細胞集塊を認めた. 核内細胞質封入体や砂粒体はみられなかった. 免疫組織化学では, AE1/AE3, Vimentin, CK7, pax-8, CD10, CA19-9が陽性, Napsin A, TTF-1, Thyroglobulin, p40, Calretinin, Podoplaninは陰性であった. 遺伝子検査では, 胸水と頸部リンパ節でBRAF (V600E) 変異が確認された. 精査の結果, 甲状腺乳頭癌 (病期Ⅳ) と診断され, 緩和的治療を行ったが1ヵ月後に死亡した.

結論 : 胸水細胞診で核形不整を示す乳頭状細胞集塊をみた場合, 甲状腺乳頭癌を鑑別に挙げる必要がある. 細胞像の特徴を十分に理解すること, 免疫染色や遺伝子検査を見据えた検体処理をすることが大切である.

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© 2019 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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