日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
症例
術前細胞診で典型像を欠き診断に苦慮した脊索腫の1例
酒田 美香大橋 隆治北川 泰之許田 典男渡曾 泰彦内藤 善哉
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 58 巻 1 号 p. 29-34

詳細
抄録

背景 : 脊索腫は, 仙骨や頭蓋底など軸骨格を中心に発症する比較的まれな腫瘍であり, 組織学的に確定診断にいたるには担空胞細胞の同定が重要な手掛かりとなる. われわれは, 術前細胞診で担空胞細胞を認めず, 診断に苦慮した脊索腫の1例を報告する.

症例 : 69歳, 女性. 転倒後の仙骨部領域の持続的な疼痛を訴え, 当院を受診. 骨盤部レントゲン, MRIで, 仙骨領域に分葉化する腫瘤を認めた. 穿刺吸引細胞診では, 多量の粘液物質内に多形性や核異型を有する紡錘形細胞の増生を認めたが, 特徴的な担空胞細胞は同定できず, 軟骨肉腫を第一に考えた. その後, 生検, 手術検体で, 好酸性の胞体をもつ上皮様異型細胞の増生を認め, 脊索腫と確定診断された.

結論 : 脊索腫の細胞診では, 担空胞細胞が同定できない場合, 診断が困難となる. 臨床, 画像的に脊索腫が示唆される場合, 典型的な細胞像を欠いても, 脊索腫の可能性があることを念頭におく必要がある.

著者関連情報
© 2019 公益社団法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top