2022 年 61 巻 2 号 p. 141-146
背景:限られた細胞診材料でも細胞転写法により,複数の抗体の免疫染色が可能となる.今回,リンパ節の穿刺吸引細胞診標本から細胞転写法を用いて免疫染色を行い,原発巣の推定が可能であった症例を経験した.
症例:80 歳代,女性.2 年前に肺腺癌と診断された.他院にて放射線治療中,左頸部の腫脹を認めた.PET-CT とエコーにて左頸部リンパ節と甲状腺左葉に腫瘤性病変が認められ穿刺吸引細胞診が施行された.甲状腺では,一部に核内封入体様の構造がみられたため,異型濾胞上皮と診断した.リンパ節では,腫大した核と明瞭な核小体をもつ細胞の集塊と,一部に核内細胞質封入体も認めた.甲状腺乳頭癌の転移を考えたが,同様の所見を示す肺腺癌の既往があり,治療方針の決定のため細胞転写法を用いた免疫染色を施行した.TTF-1,thyroglobulin,PAX8 が陽性となり,リンパ節の病変は甲状腺乳頭癌の転移と考えた.
結論:放射線治療を受けている肺癌症例に出現した頸部リンパ節腫脹の穿刺吸引細胞診標本の診断は,Pap 標本だけでは原発巣の推定がきわめて困難で,細胞転写標本の免疫染色により原発巣の推定が可能であった 1 例を報告した.