2024 年 63 巻 3 号 p. 119-128
目的:経口腸管洗浄液(PEG 電解質製剤の『ムーベン®』)を細胞診検体の保存液として使用し,経時的に細胞形態,染色性,セルブロック標本による免疫組織化学の反応性,さらに,肺腺癌の EGFR 遺伝子変異解析の検討を行った.
方法:2014 年 1 月~2022 年 12 月までに提出された液状検体 26 例および肺腫瘍擦過洗浄液検体 6 例の症例を用いた.保存液を入れた検体を,4℃ で 24 時間(h),72h,7 日間保存し,おのおの従来法で標本を作製した.また,7 日間の残検体でセルブロックを作製し,免疫染色と肺腺癌の EGFR 遺伝子変異解析を行った.
成績:採取直後の検体(以下,対照)と各保存液検体の細胞所見の比較で,変性なしが 72h で 56.3%と良好であったが,7 日間では,12.5%と低下していた.セルブロックの免疫染色は対照とすべて一致した結果が得られ,さらに肺腺癌の EGFR 遺伝子変異解析も対照と一致した遺伝子変異が検出された.
結論:経口腸管洗浄液を用いた細胞保存は,安全で,4℃で保存することにより,従来法と同様の細胞所見や遺伝子検索が可能であることから,短期間の細胞保存液として有効であると考えられた.