日本臨床細胞学会雑誌
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症例
後腹膜に発生した傍神経節腫(paraganglioma)の 1 例
荻野 正宗沖津 駿介宇杉 美由紀早川 智絵相田 芳夫
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2024 年 63 巻 3 号 p. 134-139

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抄録

背景:傍神経節腫(paraganglioma:PGL)は,頭蓋内,後腹膜大動脈周囲,膀胱等に発生するまれな神経内分泌腫瘍である.今回われわれは,後腹膜に発生した PGL の一例を経験したので報告する.

症例:40 歳代,女性.全身の筋痙攣と,血液検査でクレアチンキナーゼ値の異常上昇がみられ,当院紹介受診.腹部画像検査にて十二指腸周囲に腫瘤影が認められ,診断目的のため超音波内視鏡下穿刺吸引法が施行された.超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診では腫瘍細胞が結合性の緩い集塊状または散在性に出現していた.細胞質はレース状で境界不明瞭,N/C 比は低く核は類円形から楕円形で,核の大小不同を認めた.核クロマチンは細~粗顆粒状で,ときに巨大核が認められ,多彩性に富んだ細胞像を呈した.摘出された手術検体では好塩基性顆粒状細胞質を有する細胞が胞巣状をなし,その周囲を血管間質が取り囲む Zellballen 構造が認められた.免疫染色で chromogranin A 陽性,支持細胞が S-100 陽性で,以上より PGL と診断された.

結論:均質な所見を呈する腫瘍に比して多彩性に富んだ細胞像が認められた場合には PGL も考慮して推定すべきである.

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