2024 年 63 巻 6 号 p. 277-284
頭頸部細胞診は,唾液腺病変をはじめとしてリンパ節や甲状腺の病変,あるいは鼻腔などから発生する腫瘍が対象となり,主に穿刺吸引細胞診を用いて診断を行う検査である.頭頸部細胞診は原発性腫瘍のみならず,転移性腫瘍あるいは炎症性・感染性を含めた疾患に遭遇することがあるため,観察者には幅広い知識と経験が求められる.唾液腺の腫瘍性病変は,多形腺腫やワルチン腫瘍をはじめとして,粘表皮癌や腺様囊胞癌など数多くの組織型が分類されている.発生頻度が高い腫瘍の特徴は確実に把握しておく必要があると同時に,穿刺吸引細胞診における唾液腺病変の診断の限界についても理解しておくことも大切である.実際の細胞診断では,パパニコロウ染色を中心とした形態観察に加え,メイ・グリュンワルド・ギムザ(MGG)染色による異染性所見を観察することが基本となる.MGG 染色の長所はリンパ腫などの血液系疾患および非腫瘍性病変の推定診断に役立つため,乾燥標本を作製しておくとよい.悪性腫瘍の中には異型に乏しく一般的な悪性判定所見では,「悪性」と診断できない症例がある.したがって,唾液腺腫瘍の診断方法は,パパニコロウ染色で個々の細胞異型の観察にとどまらず,出現細胞の分化方向を推察しながら,MGG 染色を用いた粘液や細胞外間質をみていくことが肝要である.