2025 年 64 巻 3 号 p. 155-160
背景:膀胱リンパ上皮腫様癌は,上咽頭癌(いわゆるリンパ上皮癌)に類似した浸潤性尿路上皮癌の亜型に分類され,膀胱癌の 1%以下とまれである.今回,尿細胞診で貴重な細胞像を経験した一例を報告する.
症例:84 歳,女性.肉眼的血尿を主訴に受診し,膀胱鏡と MRI で膀胱三角部に 30 mm 大の結節型(広基性)腫瘍を認めた.尿細胞診では,N/C 比の高い大型異型細胞が孤立散在性~成熟リンパ球を付着した細胞境界不明瞭な小集塊で認められた.異型細胞の核は大小不同があり,クロマチンは細顆粒状で,明瞭な核小体を複数有し,高異型度尿路上皮癌とした.組織学的には合胞体様の癌細胞が浸潤性増殖し,細胞間には成熟リンパ球,形質細胞,好中球が多数認められた.癌細胞は,免疫染色で CK(AE1/AE3)と GATA3 が陽性,EBER は陰性,リンパ上皮腫様型の浸潤性尿路上皮癌と診断された.
結論:明瞭な核小体をもつ癌細胞からなる細胞境界不明瞭な小集塊と集塊内のリンパ球に注目すれば,細胞診で通常型と鑑別できる可能性がある.リンパ上皮腫様癌成分の存在は,通常型と比較し化学療法への反応性と予後の良好性が報告されており,亜型成分の存在を示唆する意義はあると考える.