2025 年 64 巻 3 号 p. 148-154
背景:悪性中皮腫は体腔液中で多彩な細胞形態を示しうるが,細胞質に脂肪滴が充満した中皮腫細胞が胸水中に多数出現した悪性中皮腫の報告はきわめて少ない.
症例:70 歳代,男性.CT にて,右肺中葉レベルの胸膜を主座とし,胸壁へ広がる腫瘤と胸水を指摘された.胸壁腫瘍生検では,上皮様形態の腫瘍細胞を認め,免疫組織化学の結果から上皮型悪性中皮腫と診断した.同時に施行された穿刺胸水細胞診では,泡沫状の豊富な細胞質をもつ大型の細胞が多数認められた.Giemsa 染色では細胞質に微小空胞の充満を認めた.微小空胞は PAS 反応陰性,Alcian blue 染色陰性,Sudan Ⅲ陽性,Oil Red O 陽性,Sudan Black B 陽性で,中性脂肪の蓄積が判明した.その後,再穿刺検体のセルブロックによる免疫細胞化学で BAP1 発現消失を認め,泡沫状大型細胞が中皮腫細胞であることを確認した.
結論:悪性中皮腫の細胞診では,細胞質が泡沫状で,空胞状の脂肪滴に富む細胞が出現することがある.中皮腫が示しうる細胞の一形態として認識し,これを手がかりとして特殊染色,免疫細胞化学による中皮腫の検索を行うことが望ましい.