日本臨床細胞学会雑誌
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Cytology of Alveolar Soft Part Sarcoma
Differentiating from Renal Adenocarcinoma
Yosei KatayamaHiroshi TakeuchiNobuo KuribayashiEtsuko KuriharaYoriko KushibeHisashi KawahataMitsuaki Yui
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1979 年 18 巻 1 号 p. 60-66

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抄録

Alveolar soft part sarcomaはまれな悪性軟部腫瘍であり, その臨床細胞学的な報告は少ない. われわれは28歳男性の左下腿に発生した本腫瘍の1例を経験し, 手術材料の捺印標本について細胞学的所見を検討したので報告する. また本腫瘍は臨床的に転移性腎癌との鑑別が最も問題になると考えられるので, 腎癌の捺印標本の細胞所見と比較した.
Alveolar soft part sarcomaの細胞はPap. 染色で辺縁不明瞭, ライトグリーンで淡染する豊富な細胞質をもつ. 胞体内に空胞はみられない. 核は偏在し, 円形または類円形で大小不同は軽度である. クロマチンは多くは顆粒状で核縁の肥厚はない. 核小体は1ないし3個みられ好酸性で大きい.
腎癌も明細胞型ではライトグリーンに淡染する豊富な細胞質をもつが, 多形性に富み, 大小不同も前者より著しい. また胞体内に空胞がみられる. 核の性状は前者とほぼ同様である.
May-Giemsa, PAS, PAMなどの染色でAlveolar soft part sarcomaの細胞質内に大小不同の顆粒が観察される. 針状結晶様構造物は本症例ではみられない. これらの顆粒はPAS消化試験で消失しない. 電顕的にも顆粒は独特の構造を示す. Sudan III染色は陰性である.
一方, 腎癌細胞質内には顆粒は見られず, PAS染色で空胞周辺が陽性であるが, ほとんどは消化試験で消失する. また腎癌細胞はSudan III染色陽性である.
以上, 両者の細胞所見の差異を述べたが, Papanicolaou染色に加えてMay-Giemsa, PAS, 同消化試験, PAM, 脂肪などの染色を施行することが, 両者の鑑別に有用であると考えられる.

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© The Japanese Society of Clinical Cytology
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