日本臨床細胞学会雑誌
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気管支末梢発生腺癌の細胞形態について
組織分化度, 臨床病期との関係
沢田 勤也福間 誠吾松村 公人池田 栄雄福田 昇
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1982 年 21 巻 4 号 p. 693-701

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抄録

末梢気管支発生の腺癌は, 術後, 予想外に早期に血行転移で失う場合がある. そこで切除肺腫瘍から捺印塗抹標本と組織標本を作成し細胞形態と組織分化度, 臨床病期との関係を研究し, 治療成績の改善に資したいと考えた. 検索対象は, 53例で全例, 肺葉切除術がなされている. 組織分化度が高くなるに伴い臨床病期1期+II期の頻度が高くなり, 肺胞上皮型は高分化型とほぼ同率であった. 細胞多形性, 核クロマチン量と核縁の折れこみ所見は組織分化度, 臨床病期と相関しているが, 肺胞上皮型は全例, 特徴所見に乏しかった.
PAS染色では手技, 観察に特に注意をはらい陽性率と3型 (びまん型, 顆粒型, 塊状型) の陽性パターンに分類し, 客観性をもたせた. 細胞100個の観察から陽性率は低分化型で最も低く, 他型はほぼ同率であった. 臨床病期間の差異はみられなかった. びまん性は低分化型に低く肺胞上皮型に高かった. 顆粒型は低分化型に低く, 塊状型は肺胞上皮型に特異的に高率であった. しかし, 臨床病期別での差異はみられなかった. Alcian-Blue染色は, 陽性率, 矢谷氏分類IX型 (細胞表面型) 出現率とも肺胞上皮型に特異的に高くみられ, 臨床病期別ではIII期+IV期にやや低率であった.

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